歯周病は、歯を支える歯ぐき(歯肉)や骨(歯槽骨)が壊されていく病気です。そして、お口の中だけではなく、糖尿病や心疾患など全身の健康に影響を与える恐ろしい疾患です。
その中でも特に深刻なのが、脳梗塞の発症リスクを高めることです。脳梗塞とは、脳の血管が詰まり、血流が途絶えてしまうことで脳細胞が壊死する病気です。日本では年間約11万人が亡くなっており、死因の第3位となっています。
では、どうして歯周病が脳梗塞を引き起こすのでしょうか?
☆歯周病菌が脳梗塞を引き起こす仕組み
歯周病は、歯周病菌が歯茎に炎症を引き起こす病気です。進行すると歯を支える骨が溶け、最終的には歯が抜けてしまうこともあります。
初期症状に痛みがないため、「サイレントディジーズ(Silent Disease:静かなる病気)」とも呼ばれ、自覚しにくいので気づかないうちに進行していきます。
悪化すると歯茎が下がり口臭が強くなり、血管が損傷して歯茎から出血します。そして、食事のたびに歯周病菌などの細菌が出血部位から血液中に入り込むのです。
仮に、歯周ポケットが全ての歯に5mm以上あって出血がある場合、傷の総面積は手のひらサイズほどになります。その傷の表面が常に、歯周病菌などの口腔内細菌とその毒素や炎症物質にさらされるため、傷口から細菌が血流に入り込み、全身に流れていくのです。そして、次のような順序で病気を引き起こします。
(1) 歯茎から血管に侵入↓
歯周病菌が血管内に入り込むと、血管の内壁にダメージを与え、炎症を引き起こします。
(2) 血管が硬くなり、詰まりやすくなる↓
炎症が続くと、血管が狭くなり、動脈硬化が進行します。血流が悪くなり、血栓(血の塊)ができやすくなります。
(3) 脳の血管が詰まり、脳梗塞を引き起こす↓
できた血栓が脳の血管で詰まると、脳細胞への血流が止まり、脳梗塞が発症してしまいます。
☆脳梗塞のリスクが高い人は?
次のような人は、特に脳梗塞のリスクが高いため、歯周病予防に力を入れましょう。
- 高血圧の人 → 血管への負担が大きく、動脈硬化が進みやすい
- 糖尿病の人 → 免疫力が低下し、歯周病になりやすい
- 喫煙者 → 血管が収縮して血流が悪化し、歯周病が悪化しやすい
- 肥満の人 → 生活習慣病が原因で血管が詰まりやすい
- ストレスが多い人 → 免疫力が低下し、炎症が起こりやすい
脳梗塞のリスクを下げるために歯周病の予防に力を入れましょう。歯周病は痛みや自覚症状がほとんどないため定期検診が重要です。
3ヶ月に一度は歯科医院で健診と歯石除去や歯面清掃を受けましょう。
歯周病を早期発見・早期治療して口腔環境を整え、健康に過ごしましょう。