歯周病の治療

歯周病と治療方法

歯周病は、成人の7割以上がかかっているといわれるお口の病気です。
歯周病は、プラーク(歯垢)に潜む歯周病菌が原因で、歯ぐきなどの炎症を引き起こす病気です。進行すると歯を支えている骨が溶け、最後には歯が抜けてしまう怖い病気です。しかも初期段階では自覚症状がなく、激しい出血や痛み、歯の揺れなど明らかな自覚症状が出る頃には、重度の歯周病になっていることも珍しくありません。
虫歯を作る原因の細菌と考えられているミュータンス菌は12~30か月の幼児期に感染しなければ、口の中に定着しにくい、と考えられていますが、歯周病の原因菌(これらはざっくり言うといわゆる悪玉菌です)は何歳になっても感染する(人から移される)可能性があります。早期発見・早期治療のため、定期的な検診をおすすめします。

歯周病はある意味では「水虫」に似ています。なったことがある人はわかるかと思いますが、細菌による感染症で非常に治りにくい病気です。清潔に保つことが必須ですが、それだけでは治らず薬を適切に使うことも重要です。そして薬でいったん治ったようにみえても、不潔だったり他から移されやすい状況(家族も水虫である。サウナ等、水虫の人も利用する場所に行く)下では、再発する可能性もあります。ただし、体のほうが強くなると再感染しづらくなります。私自身おそらくは趣味のサウナで水虫に感染したのですが、薬と清潔を守る等の対処で完治し、いまもサウナには行きますが大丈夫です。同じことが歯周病の原因菌にもいえるのです。

歯肉炎 軽度歯周炎 中度歯周炎 重度歯周炎


歯肉炎

歯肉炎を説明するイラスト

歯ぐきが炎症をおこして腫れています

歯周病の初期段階。歯と歯ぐきの境目にプラークが溜まり、歯ぐきが炎症を起こして赤く腫れています。痛みはありませんが、歯ブラシの際に稀に出血することがあります。歯科医院で行うスケーリング(歯石の除去)と、毎日のブラッシングでプラークをしっかり除去することで、通常は健康な状態に戻すことができます。
歯磨きの時に出る血を単なる出血と軽く考えないでください。
歯周病の影響は口の中だけではありません。悪玉菌は出血しやすい歯ぐきの血管から体内に入って、歯原性菌血症となり様々な成人生活習慣病等を引き起こす、ドミノの最初の1枚であると最近考えられています。


軽度歯周炎

経度歯肉炎を説明するイラスト

歯周ポケットができ、出血もみられます

歯ぐきの炎症が進み、歯から歯肉が剥がれて歯周ポケットができます。歯ブラシの際に出血することがありますが、この時点ではまだ痛みがありません。歯科医院で行うスケーリング(歯石の除去)と、毎日のブラッシングでプラークをしっかり除去することで改善します。
つまようじ法ブラシングは非常に高い効果が期待できます。ただ、PG菌などの為害性の強い細菌が存在する場合は、歯周内科療法、3DS療法などの除菌療法で高い効果が期待できます。


中度歯周炎

中度歯肉炎を説明するイラスト

歯ぐきの奥まで歯石ができ、歯を支える骨が溶ける

歯周ポケットが深くなり、歯を支えている骨(歯槽骨)が溶け始めます。あわせて歯肉も下がるため、歯が伸びてきたように見えます。歯ぐきの出血に加え、歯が揺れる、痛みや違和感などの症状が出ることがあります。スケーリングや、ルートプレーニング(歯ぐきの中に入り込んだ歯石の除去)による治療を行います。
つまようじ法ブラシング、歯周内科治療や3DS療法も効果が期待できます。


重度歯周炎

重度歯肉炎を説明するイラスト

骨が溶け、歯がグラグラする

歯を支える骨(歯槽骨)が溶けて半分以上なくなり、歯が激しくグラグラするようになります。治療も難しくなり、歯を抜かなければならない場合もあります。溶けてしまった骨は、基本的には元に戻りません。できればこうなる前に治療しましょう。歯周内科治療や3DS療法での効果もある程度期待できます。

歯周内科治療について

虫歯や歯周病の原因は細菌なのですが、たとえ消毒剤を使っても口の中のばい菌を0にすることはできません。
口の中の菌全体における虫歯、歯周病に関係する悪玉菌の割合を減らすことが重要なのです。
歯周内科治療は、歯周病等の病原性のない正常な細菌叢の獲得を目指して、抗菌薬を併用していく治療法です(薬だけで治るわけではありません)。うまくいくと患者さんも楽によい結果が得られます。
もともと口の中は体の中で一番細菌が多い(細菌は口の中にいて当たり前です)ところなのですが、その中でいわゆる悪玉菌の比率が上がると歯周病や虫歯などが発生するのです。それだけではなく最近では歯原性菌血症という状況が思ったより体に影響を与えていることがわかりました。これは口の中の悪玉菌が歯周病で腫れた部分から血液中に入り(歯原性菌血症という状態です)、主に成人病の原因になっているという考えです。動脈硬化、心臓疾患、糖尿病、脳出血などいろいろな疾患の入り口(ドミノの最初の1枚)ということです。
当院では細菌遺伝子のPCR検査をもとに、とくに悪影響があると考えられている数種の菌の存在を確認して治療法を決め、より確実に治療効果が出るように歯周内科治療が出来るようになりました。次亜塩素酸除菌水、エアフロー、3DSトレー療法なども適宜組み込んでいます。

歯周病内科治療

保険適応
費用 55,000〜88,000円(税込)
回数 4〜6回
期間 1〜2か月
一旦終了後のタッチアップは含みません。
長所 ・外科的処置を回避できるなど、体への負担が少なくなる可能性がある。
・患者個人の歯周病の原因菌の同定をした上で、適切な抗菌剤を選択するため効果が出やすい。
短所 ・ひとたび改善しても家族などから再感染する可能性がある。

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