2020年 1月 の投稿一覧

ヌルヌル、それともツルツル?

ご自分の歯を舌で舐めてみてください。ヌルヌルした感じがありませんか?
これは、歯についた「バイオフィルム」です。

このバイオフィルムは排水溝などにつくヌメリと同じもので正体は細菌の集合体です。その表面は内側の細菌を守るバリヤーとなり、このバリヤーの中でむし歯菌や歯周病菌などが増殖し、お口の中の環境が悪化していきます。

しかし、バイオフィルムは普段の歯磨きで除去できるものではなく、また、殺菌剤や抗生剤なども一部にしか効かないため、歯科で機械的な除去(PMTC)を行うのが効果的なのです。


PMTCでバイオフィルムの除去を行うとむし歯や歯周病の予防になるだけではなく、お口の中がサッパリし、歯もツルツル、口臭も軽減されて良いことづくめです。

バイオフィルムは3~4カ月ほどのサイクルで出来るといわれます。お口の環境を守るために定期的に受けることが好ましいといわれています。

バイオフィルムやステイン(茶シブなどの着色汚れ)除去には、通常の超音波スケーラーや回転器具のほかに、エアフロー(アミノ酸の粉を圧搾空気で歯面に吹き付ける器具)や次亜塩素酸水を利用した超音波クリーニングなどの方法で、より確実にバイオフィルム除去ができると考えられており、当院で行っています。

最近行った講習会について~20200126~

1月12日 「咬合のEvidenceとNoEvidence」 北海道口腔医療研究会 (札幌)


再考! 「咬合のエビデンスの今とその臨床応用」 古谷野潔 先生(九州大教授)
熟考! 「臨床における 咬合論の理想と現実」 野谷健治千世(元・北大准教授)

最近の講習会で嚙み合わせに的を絞ったものはほとんどありません。小谷野先生は過去の文献を丁寧に拾い上げて嚙み合わせに関する考え方の変遷について説明されました。

野谷先生は私が北大在局時の師匠筋にあたる方で非常にお世話になり、かつ影響を受けた先生です。いまも豊富な知識と経験で症例を交えて説明してくれました。

 

1月25日 「口腔機能と健康寿命との関係を考える」 


北海道大学大学院歯学研究科口腔機能学講座同門会講演会(札幌)  
渡邉裕先生(北海道大学大学院歯学研究科高齢者歯科学教室准教授)

私の所属していた講座の同門会の新年会で行った講演会です。日本の医療福祉政策は方針が変わりつつあります。健康寿命を延ばすことを目的に、フレイル(身体の衰え)対策に主眼が置かれるようになってきています。要介護状態を減らして目指すは「ピンピンコロリ」。

 フレイルは全身的なことではなく口周りにも当然生じ、それをオーラルフレイルと呼びます。じつは全身的なフレイルよりオーラルフレイルが先行しているというデータが出てきている、ということを述べられていました。口の老化から身体の老化が始まる、ということです!

 フレイルは高齢者のみに起こる事象ではなく、最近では若年者からその兆候が現れているとも述べられていました。私が参加しているMFA、先日聴講したVキッズなどでも、乳幼児期からの育て方(歯科的な部分では哺乳法、食事等々)で骨格、歯並び等さまざまな変化が起こりうるとしています。いまさらながら歯科治療において「機能」を考える必要があると思いました。自分のブログでも近いうちにbaby led weaning 等についても書こうかなと思っています。

 

新年あけましておめでとうございます。

今年は東京オリンピックがあり、マラソンは札幌で見ることが出来ます。本州にいる北大歯学部の同級生も何名かマラソンを見にやってくるようです。オリンピック後に予想される不景気は怖いけれど、やれることを地道にやっていくしかないですよね。

歯科の世界も新しい治療法や考え方などが出てきております。漫然と診療だけしていると時代に遅れてしまいかねません。変わらない根幹の部分は大事にしつつ、今年もアンテナを張っていろいろ吸収していきたいと考えています。本年もよろしくお願いいたします。

 

最近参加した講習会について~202001~

<11月30日、12月1日    医療従事者全ての人に届けたい「西田 亙のすべて」in 札幌 西田亙先生 (札幌)>
西田先生は愛媛県松山市の糖尿病内科院長です。最近は歯周病と糖尿病の関連などについて、執筆や全国で講演活動を行っておられます。

30日はデンタルインタビュー(歯科における医療面接)のロールプレイング(患者サイドの感じ方を体験する)を交えた説明でした。

1日は口腔内の炎症が原因で全身に与える影響について、エビデンス(研究報告)と、実際の患者さんの症例の紹介があり、非常にわかりやすく講演されました。なによりも、話し方がうまく、同伴した(うれしいことに自主的に参加希望しました)当院の衛生士3名も興味を持って聞いてくれ、講演後には西田先生との写真も撮らせてもらっていました。

<12月15日 診断チャートでよくわかる痛み主訴への対応 福田謙一先生 (東京)>
歯医者に来る患者さんは痛みを主訴とする場合がかなり多いです。そしてそのほとんどは虫歯や親知らず部の炎症などで、治療の方向は比較的はっきりしていますが、なかには痛みの原因がはっきりしないケースがあります。

推測で歯を削ったり、あるいは抜いたりすることはできません。原因が歯ではないにもかかわらず、歯が痛いと感じる場合もあり、「非歯原性歯痛」といいます。

非歯原性歯痛の原因は筋肉、神経障害、血管、心臓病などが挙げられます。福田先生は東京歯科大学で口腔顔面痛のスペシャリストで、このセミナーでは痛みの鑑別を診断チャートを用いて行う方法を主に、各種鎮痛剤の使い方診断において見逃してはいけない症例と対応法などがレクチャーされました。なかなか面白く拝聴させていただきました。